(1)2000.8.3

$ 病巣は排除 $

 昨日運良く後ろを走っている車に軽く追突された。
 体の方は全く平気なのだが慰謝料をふんだくる絶好のチャンスだ!
 そこで今整形外科で診察を受けているところだ。
 痛い痛いと言ってさえいれば診断書が出る。
 鞭打ち症とはそういうものなのだ。

「はあー、あなた癌ですね」
「え?」
「世の中のね」

 グサッ

 排除された。



(2)2000.8.3

$ 流 行 $

 パソコンが流行った。
 パソコンが出来なかったやつほど
「アイティーアイティー」とよくわめく。
 始めパソコンの事が分からなくてそのコンプレックスからパソコ
ンが出来る者がまるで悪者であるかの様に責めて自分が優位に立と
うとしていたのだが、
 ひとたび覚えてしまうと今度はパソコンに馴染めない者を信じら
れないといった風な顔で見下し優越感に浸る。
 まあどっちみちたいした技術でもないのにな。
 今まで出来なかった分不必要なくらいパソコンをする。

 核爆実験が流行った。
 核爆実験が出来なかった奴ほど・・・・



(3)2000.8.3

$ 馬鹿で通すしかない正義の味方 $

「君たちはまちがっている!」
「は?」
「ぼくは正義の味方だ!」
「なにを」
「ビーム!」 ズガーン

 林檎を食べようしたアダムとイヴは殺されて人類は滅亡した。



(4)2000.8.3

$ ノーフューチャー $

 世の中が悪いんだ。
 世間のクズどもめ。
 飼いならされた犬どもめ。
 間抜けな平和主義者どもめ。
 大勢に流されるだけのバカどもめ。

 しかし、だいたいこんな事言ってる奴に限って
扶養家族のガキである。



(5)2000.8.3

$ 低血圧 $

 例えば、いろいろやりたい事があったりして夜更かししてしまう
でしょ。
 なるべく眠りたくなかったりしますよねえ。
 なのにいったん寝てしまうと今度は反対にいろいろせねばいけな
い事があるにもかかわらずなかなか眠りから覚めたがらないじゃな
いですか。
 むりやり起こされたら怒るでしょ?
 だから、ね、分かるでしょ?

 ガブリ

 そういう理由でゾンビは人間に襲いかかるらしい。
 生き返りは寝起きの100倍腹が立つそうだ。



(6)2000.8.3

$ お 礼 $

 ある冬の日。
 1羽の鶴が狼に襲われていた。
 そこに偶然通りかかった青年が鶴を助けた。
 鶴は礼を言う様に一声鳴くと嬉しそうに飛び立って行った。
 その夜。
 青年の家に見知らぬ1人の美しい少女が訪ねて来た。
 外は酷い吹雪。
「道に迷ってしまいました。
 どうか一晩泊めていただけないでしょうか」
 青年は快く少女を家に通した。
 鶴の恩返しかと青年は一瞬思いもしたが
 そんな馬鹿なとすぐに世迷言だと打ち消した。
 そして夜も深まって寝床につく頃青年の部屋の戸がスーと開いた。
「今夜はどうしても昼間のお礼をしとうございます」
「そんな、ま、まさか」
 まさかとか言いながら青年はこの美しい少女を前にして
 顔の筋肉がゆるまずにはいられない。やはり健康な男なのだ。
 実はこの少女が
 最後の獲物にありつけなくて餓死した狼の怨霊だとも知らずに。



(7)2000.8.11

$ 他人の物の方が良く見える $

 くそっ!
 どんなにがんばっても奴らより速く走れない。
 また不本意にも運転手によってブレーキがかけられる。
 皆はおまえの方が速いと言うが俺は騙されない。
 俺のスピードガンで奴らの速度を計ったらなんとMAX時には俺
の倍近いスピードを記録した。
 くそっ!くそっ!くそっ!
 俺は出力を上げる。が、しかし、
 また運転手によってブレーキがかけられた。ちくしょう。

「この最新の人工頭脳付き急行列車はいかんなあ。
 ちっとも言うことを聞きやがらない」
「あぁ、だからこれ近々廃車にされるそうだぜ」

 設計者はこの人工頭脳に相対速度というものを入力すべきだった
のだろう。この急行列車はいつも対向車線を走る自分の同僚を見て
悔しがっていたのである。



(8)2000.8.11

$ やがて来る平和な世界 $

 春。

 平穏で平和な日々が繰り返される。
 2億年ちょっと続いた低脳な生き物の時代とは訳が違う。

 場所は日本。
 そう、とある普通の中流家庭の風景。

 朝、一日が始まる。
 空実は今日から高校1年生の女学生だ。
 念願の志望校に受かって今日は初登校である。
 いやがおうにも期待が膨らむ。
 空実も年頃である。
 まだ背中には成虫の様なこげ茶色で艶のある羽は生えていないが
長い触覚を時間をかけて丁寧に手入れし、6本ある手足の外骨格の
オシャレにも余念がない。

 時代は
 そう、遠い昔には西暦というものがあったかもしれない。



(9)2000.8.19

$ 人の噂 $

 噂の木というのは根も葉も無いのに良く育つもんだ。
 ずっと前にも僕が書いたパロディーものの同人誌をどこのどいつ
がどう解釈したのかしれないけれど、物凄い大騒ぎになって、あわ
や世界中大パニックになるところだったんだよ。
 いや、ほんと、大袈裟な話じゃ無くて。
 その騒ぎが納まるまで今までかかったんだから〜。
 これで安心して成仏できる。

                  by ノストラダムス



(10)2000.8.19

$ 今はまだまし $

「ブリはいいよな〜。ただボーっとしてるだけで出世できる」
 ……
「なんて言ってた頃は良かったよ。今じゃあ戦力外扱いだもの」
 ……
「って窓際で言ってた頃が花だったよ。今思え」
 ……
「とかリストラされて公園でグチこぼしてた頃はまだまだましだっ
たな〜。もう今のこの生活にも疲れ果てた」
 ……
「などと殺人を犯して逃亡生活してた頃は考え様によっては充実し
てたものさ。」
 ……
「ああ、それでもまだましだった。どこでどう狂ってこんな事にな
っちまったんだろう。最終的に相手の弁護士にハメられちまった」

 死刑執行人により罪人の顔にカバーがかけられる。
 高圧の電気ショックにより目玉などが飛び出さない様にする為だ。

「酷いよ。酷いよ。恐いよ。暗いよ。ひぃぃぁあ…… バシッ

 ……

「そんなふうに死を恐れていた頃はまだましでした。あの後すぐ閻
魔様に舌を抜かれ血の池に沈められ針の山で全身穴だらけにされ釜
で茹でられ、しかるのちに全身の生皮を剥がされて只今石うすにか
けられている真っ最中でございます。」
ガリゴリガリゴリ……


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