(11)2000.8.23

$ いじめは100まで $

 私は子供の頃背が低くて体も細くそれが原因でよくいじめられた。
 子供というのは残酷なもので必ずクラスで1人か2人は目をつけ
られて事あるごとに執拗にいじめられる者が選出される。
「いじめなど確認出来ませんでした」
 などと言う教師やいじめの存在自体を遺憾ともし難いと嘆く大人
が大勢いるがとんでもない大嘘つきか死んだ方が良いようなマヌケ
どもである。
 どこの世界にもいじめというものは「無いわけが無い」のである。

 いじめの報復として殺人を犯す奴がいるがその気持ちは分かる。
 私は体が弱いのでただひたすら知識をつめこんだ。
 人体の構造を学び、いじめっ子に復讐する空想に酔った。
 私の頭の中では自由自在ににいじめっ子どもを刃物でバラバラに
り切刻み、バラエティーに富んだ毒薬劇薬で悶え苦しませる事がで
きた。
 くひひひひひ、、、、

 話を元に戻そう。
 何もいじめは子供や大人だけのものではない。
 それは年老いた老人の間でも繰り広げられる。
 老人は人生の年輪を重ねることによってデキた人格が形成されて
いると思ったら大間違いだ。
 例えばここのとある病院では、
 例によって朝早くから病院の前で老人達がたむろしているのだが、
 この中に1人耳の遠い者がいる。
 すると他の老人連中はそれをいいことによってたかってその耳の
遠い老人の目の前で悪口を言って楽しんだりしている。
 何時までたっても他人の痛みが分からない様だ。
 この馬鹿どもは。

 ……

「先生、診察のお時間です。」

「ん、あぁ分かったよ」

 窓の外の出来事をうかがっている私に看護婦が営業時間の開始を
知らせにやって来た。
 もうそんな時間か。
 さて、いじめられ続けてきた者の気持ちを味合わせてやる番がや
ってきた。
 くひひひひひ、、、、



(12)2000.8.31

$ ちょっとしたミス $

「、、、、まったくもう、いつもいつも困るな」

〃くそ、
 "いつも"とか言うな!
 今日俺は仕事でちょっとしたミスをした。
 ここ最近で2度。
 大事には至らないものなのだが、とにかくミスをしてしまった。
 確かにミスをしたのは悪いことでその手前反論することは出来な
 い。
 が、"いつも"とか言うなよ!!
 俺は1年365日毎日働いて1つのミスも犯さずにやってきたん
 だ。
 それがたった2度のミスで俺の今までの功績や人格の全てを否定
 する様な言い方はするな!ゆるさない!!!
 くそっ!くそっ!くそっ!
 なんかだんだん腹が立ってきた。
 もうキレた。爆発しそうだ。〃

 ピキピキドカーン!!!!

 某日未明、××原子力発電所核融合炉爆発。



(13)2000.9.13

$ お袋の味 $

「やっぱりこれだね、
 子供の頃、かあちゃんに食べさせてもらった味だよ。
 いや〜、お袋の味ってやつだね」

 ありがちな会話で賑わう、とあるレトロな居酒屋であった。

 それから50年、現代人の食事事情は根底から見直され無農薬無
添加の自然野菜が予想だにしない空前絶後の大ブームとなり、どこ
の食卓にも我を競うように健康を第一に考えた手料理が並ぶ時代が
訪れた。

「やっぱりこれだね、
 子供の頃、かあちゃんに食べさせてもらった味だよ。
 いや〜、袋の味ってやつだね」

 ありがちな会話で賑わう、とあるレトルト専門居酒屋であった。



(14)2000.9.13

$ 芸術は金だ $

「え〜と、去年は○○先生が××賞で、そのお弟子さんが△△賞で、
 □□先生が○○賞で、そのお弟子さんその1が……」

 もうじき全国的に開催される某美術団体の展覧会実行委員会副委
員長である私は毎年この時期になると頭を悩ませる。
 これらの展覧会には受賞のローテーションというものがあって先
生方の勢力関係や寄付金などその他様々な難しい事情によりどの人
にどの賞を与えるかを決定する。
 私にはその最良案を書面にまとめて提出するという仕事が毎年ま
わってくる。
 審査員たちは無論名ばかりで、こういった根回しすら原案が無い
とまともに出来ない老人たちである。

「う〜ん、この新人の日本画なんかかなり良い線いってるんだけど
 な、寄付金が少なかったから会場に展示する事も出来ないな。実
 力だけら間違い無く最上位なのに」

 まったく団体への寄付金だとか権力だとか年功序列だとか面子だ
かとマヌケな事ばかり言いやがって、
 なんか考えてたらだんだんだんだん腹が立ってきた。
 芸術とはなぁ!絵の順位とかなぁ!本当に賞が欲しいならなぁ!

 原案を作成している私への賄賂だよ。



(15)2000.9.13

$ 大人もキれる $

 夢が希望がと言って子供は親の夢と希望をつぶしながら育つ。
 まあ親のエゴ、子供の我侭、どっちもどっちなのだが、最近は子
供の我侭の方にやや分があるようだな。
 若者達の「キれる」という言葉に「分かっていない」大人たちは
怯えている。

「なんと情けない事だろう!私は1大人の立場として今の若者にガ
 ツーンと言ってやりたかったんだ」

「だからって幼児ポルノでSMってのはやめろ」



(16)2000.9.14

$ 黒い髪をくれ $

 夏休みを利用して女房と子供を連れて海に来た。
 泊まりはキャンプだ。
 酷い田舎だが水やトイレは近くの井戸や廃屋でまに合わす事がで
きる場所だ。
 食っちゃ寝えするだけの鬼女房と言う事を聞かないバカ息子と金
食い虫の娘2人だがとりあえずは納得してくれた。

 夜、用を足しに行く。
 昼間は海の家のトイレで済ませたのだが、夜は廃屋の一部に残っ
ているものを利用する。汲み取り式の便所だがさほど臭くも無く汚
れも砂埃ぐらいだ。キャンプ客用に掃除されているのかな。
 そして出すものを出して便所を出ようとした時、ドアが開かない。
 ボロくなっているのに渾身の力を込めてもびくともしない。
 汗だくになって困り果てているところに背後から声が響いてきた。
 しわがれた声で、地の底から響く様に、恨めしそうに、
「カミをくれぇ」
 で、出た。
 便器の中の闇からしわしわの太い腕がぬーっと伸びてくる。
 これは、紙をわたしても「おまえの髪だー」とか言って便器の奥
に引きずり込まれるというものに違いない。
「カミィィィィィイイイイイ」
 私はせめてもの抵抗で何もわたさないでいた。違うおまえの髪だ、
などというツッコミを入れるタイミングが無ければ魔物も退散する
しかもれないという僅かな望みを持って、しかし、
「髪をよこせぇぇぇぇぇぇぇぇぇいいいい」
 ひときわ怒りを込めた声が鳴り響きしわしわの五指が私の頭に触
れた。
 もうダメだ。と覚悟を決めた。
 のだが次の瞬間しわしわの腕は恨めしそうにうめくとスルスルと
もとの便所の奥底に戻っていった。
 ドアも力を無くしたようにカタンと開いた。

 ああそうだ、私はハゲ頭だった。

 私は何事もなかったかのように気を取り直し、私を虐げ続けてき
た家族に便所の場所だけを伝えるようキャンプ場に戻った。



(17)2000.9.17

$ ツケは払え $

 日本の大人は勉強をしない事で世界的に有名なわけだが、
 子供には勉強勉強とうるさい事でも世界的に有名だ。
 そして勉強をしなかった親ほど子供を有名私立に入れたがる。
 学歴社会は間違ってると言ってたのに我が子にはお受験だ。

 別件でよくこんな事では未来の子供達にツケが回ってくる、とか
マスコミがのたまっているのを聞くが、既に今現在進行形で自分の
子供達にツケを押し付けているじゃないか。
 などと思っていたのだが、
 30年後。老人大国となった日本。

 国家は先代の過ちによる莫大なツケを解決するために、官僚や大
臣から無能な老人たちを排除し、古代の法案執行を議決。

 姥捨て山が復活した。



(18)2000.9.27

$ アベレージ $

「あ、おつりはいいです」
 啓子はそう言ってタクシーを降りた。
 アベレージを保つために。

 啓子は昨日の夕食を外で済ました際に店員が誤って、おつりを多
めに貰ってしまった。
 良い事と悪い事の平均値は保たなければならない。
 啓子は自分の生涯において常にこのルールを保つ事を最重要視し
てきた。このルールを保つ事によって心の平穏と安全な生活が得ら
れるのだと硬く信じこれからも無事生きてゆけるのだと疑わない。
 だから昨日の余分に受け取ったおつりの分は今日おつりを受け取
らない事で差し引きゼロになるという事なのだ。

「次はあなたの番よ」
 深夜、啓子はズタズタになった手足を引きずり、全身の激痛に耐
えながら、すぐ側で寝ている別の重症患者の生命維持装置のスイッ
チに手をかけた。
 あれから啓子は偶然車に轢かれそうになっている人を助けて代わ
りに運悪く自分が轢かれてしまったのである。
 啓子は重症を負い先は長くない。
 だからアベレージを保つために今度は自分の手で他人の息の根を
止めてやるのである。
 啓子はこのルールを保つ事によって心の平穏と安全な生活が得ら
れるのだと、、、、



(19)2000.9.27

$ アベレージ2 $

 同院内で突然脳死患者が現れたことにより緊急の臓器移植が成さ
れ啓子は一命を取り留めた。



(20)2000.9.27

$ 裏切り $

 今までずっと仲良くやっていたのに、
 幼い頃から面倒をみてくれて、
 親や友達以上の存在だったのに。
 それなのに、
 あんなに優しい人が私達の家族を殺害するなんて。
 そして今まさに私までも手にかけようというのですね。
 貴方がどんな殺戮者に変わり果てようとも、貴方が世界じゅうを
敵にまわしてしまったとしても、
 私だけは最後まで味方でいようと勤めてきたのに。
 ひどいわ。
 何がいけないの?
 私達が何をしたって言うの?

「それにしてもうるさい豚だなあ」

(養豚場にて)



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