(141)2001.3.16

$ 善悪 $

 正義とは集団生活を強いられる社会においてその機能が充分に発
揮できるよう定められた一種のルールである。
 これが一切守られないとたちまち秩序が乱れ社会全体の崩壊をま
ねき、ひいては個々の生存も立ち行かなくなる。
 ゆえに、いわゆる悪とされるものは社会から廃除される。
 しかしながら主を個に置いた時、善は善ではなくなり、悪は悪で
はなくなるケースがしばしばある。
 だから、犯罪者は必ずしも「悪い者」であるとは言えず、正確に
は「ルール違反をした者」と言うべきである。
 社会という試合の中でルールーを犯した者なのである。
 だから、犯罪者を指して倫理や道徳的概念から判決を下すような
行為は基本的には間違っている。
 良い悪いではなく間違っているいないである。
 もちろんルール違反をしてなおかつ悪人であるという者もいるだ
ろうが、おそらくはルール違反をしていないけども極悪人であると
いう者の方がはるかに多いに違いない。
 だからよくテレビ等で好き勝手に報道している人間は間違いを犯
していると言える。
 彼らは感情的になってうわべと自分が正義の使者であるかのよう
に振舞えるのに都合の良い側面だけをめざとく見つけ出して喚いて
いる「ルール違反をしていない悪人」である。
 そしてテレビでそんな風潮が強まるのは視聴者がそんなものを求
めるからである。
 そう考えてみればテレビのプロデューサーはスポンサーとの契約
を果たし、視聴率を稼ぐ為に勤勉に働いているだけであって、その
結果として視聴者が望むものを製作しているにすぎない。
 なんと非常に真面目で働き者でルールをよく守る人ではないか。
 そうなると諸悪の根源はやはり視聴者、つまりテレビを観ている
国民全体ということになるのか。
 では全員が悪人なのだ。そうか、そうだったのか。

「手からビ〜ム」

〃ニュースの時間です。本日未明、突如「正義の味方」と名のる怪
 人が町に現れて大量無差別殺人を始めました。犯人は「法では裁
 けない悪を私が裁く」と連呼しており、、、、〃



(142)2001.3.18

$ 本命チョコの重み $

「ごめん、俺、他に好きな人がいるんだ」
「ごめん、俺、ホモなんだ」
「ごめん、俺、実は女なんだ」
「ごめん、俺、2次元の女の子にしか興味が無いんだ」

 100の義理チョコより1の本命。
 と発表する奴がよくいるが想像力すら欠如しているのだろうな。
 バレンタインデーとは恋人たちと恋人予備軍の為の日であり、
 また、わりかしチョコにありつけない男どもの日でもある。
 ドラマの主役になるのはおおむねその2タイプだからだ。

 しかし、実際には本命チョコを2枚以上貰ったり、或いは全く好
きになれない相手から本命チョコを受け取ったりする場合もあると
いうことを忘れてはいけない。そしてこれが最も悲惨でなのである。
 本命チョコよりも義理チョコの方が実は良いのだ。

 告白を断る立場というのは通常不利でかつ辛いものである。
 ふられる方は被害者で可愛そう、ふる方は加害者で酷い奴。
 男の方は頼みもしないのに攻撃を仕掛けられて、断る勇気をもつ
者は突然悪者にされてしまう日なのだ。
 そして、なんとかして答えをはぐらかしてきた哀れな犠牲者も今
日という日、ホワイトデーには鎖に縛られるか罪人になるかの結論
を迫られる。

「う〜ん。2次元の女の子にしか興味が無いって線でゆくか」

 そして、更に悲惨なのがこの後、義理チョコを勝手に本命だと勘
違していたということを、この男は思い知らされるのであった。



(143)2001.3.18

$ 本物の旨み $

「ん、このダシは」

「ほほう、分かりましたかな」

「この複雑微妙でいて後味すっきりと嫌味無く引いてゆく清涼さ。
それでいてなんとも言えない旨みが至福の境地に導いてくれる。こ
れはダシに秘密がありますね」

「いかにも。本物の素材を本物の職人が培ってきた本物の技術で料
理したのだ。そんじょそこらの料亭では味わえないほど微妙で繊細
に仕上がっている」

「さすが先生です。この複雑微妙な味は常人には到底理解できない
ものです」

 っていうか、
 普通の人が食って分からんようなもん作ってなにする。
 そして威張るな。



(144)2001.3.19

$ お教育 $

 頭の悪い親ほど子供には勉強勉強と言う。
 子供はそのかいあって多少は頭が良くなる。
 そのせいで親は自分の頭の悪さ加減が子供にバレる。
 子供は「こんな大人になりたくない」とか言う。
 当然のことだ。
 子供が生意気な事を言うのにも理由と原因はあるのだ。
 でも親はバカなのでそんなことは分からず分かろうともせずもは
や分かるという行為そのものが邪魔であったりする。
 これでは子供が可愛そうだ。
 そして、
 その子供も大人になる。
「こんな大人になりたくない」などと言っていた奴に限って「こん
 な大人」になる。
 学校を卒業した後はひたすら自堕落な生活を送りバカに逆戻りする。
 そしてまた同じように自分の子供に勉強勉強と言う。
 子供はそのかいあって多少は頭が良くなる。
 そのせいで子供は親の頭の悪さ加減を知る。
 バカの子がバカを産みまたバカがバカの子を産む。
 歴史で過去の失敗や成功を学ぶわりには同じ事を繰り返す。
 数学で理論的な思考力を養うわりには無計画な愚考しか出来ない。
 国語を勉強しても日本語を話せない理解できない。
 まったく一向に進歩が無い。
 教育というものに幻影を抱いた者の末路とはこんなものである。

 よって全国の学校で配布されている教科書等は有害図書に指定し、
 年齢18未満の購入を固く禁ずるものとする。



(145)2001.3.21

$ 迷惑なお喋り $

「ま〜ったくなんざんしょねぇ。近頃の若い人たちときたら」
「そうそう、ところかまわず携帯電話でお喋りでしょう」
「もうまたっくまわりの迷惑ってものを考えてないのよねぇ」
「ほんっとにも〜。私たちの若い頃なんか人前で大きな声でお喋り
なんてはしたないと思ったものだわ」
「若い人ははしたないなんて単語知ってるのかしら」
「それに本人は電話の話に没頭して気付かないんだけど、恥ずかし
い話とかも、みんなまわりの人たちに聞かれてるっていうの」
「バカですわよね〜」
「とにかく迷惑ですわ。ラジカセも携帯も本人意外は迷惑でしかな
いですわ。」
「うるさいったらありゃしないざます」
「ね〜え」×5

 などと大声で語らっているオバハンたちを電車で見かけた。
 携帯の方がよほどかわいらしいと思った。



(146)2001.3.28

$ 政治家の憂鬱 $

 物心が付いてすぐ英才教育を受けさせられていた。
 子供らしい遊びをすることなどは許されない生活。

 中学になると柔道部の主将を務めた。
 文武両道と言うわけだ。
 成績は常にトップで学級委員或いは生徒会長。
 思えばこの頃からうすうす感付いてはいた。

 大学は勿論ストレートで東大。
 成績は常にトップクラス。
 一点の妥協も許されない。
 そして政治家になった。
 そんな私がこの歳になって確実に分かった事が1つある。それは、

 国民は、学生も含めて、実に無責任だと言う事だ。

 面倒くさい役目は学級委員等に押し付け、自分の思い通りに行か
ない理由は担任の先生や親のせいだとこじつけ、そのくせ一人前に
我侭勝手を主張するクラスのみんな。
 ろくに考えもしないでテレビが斡旋する上辺だけのニュースでギャ
ーギャー喚く、何か少しでも自分の生活にかかわる事象に直面した
らこれまたバカの1つ覚えみたいにギャーギャー喚く。
 無論、その喚きというのは国のことを考えた結果のものではなく、
自分の目先の被害にだけ向けられたものであることは言うまでもな
い。国家全体に係ることは我々だけに押し付けて無視だ。
 常に、何をしても、文句を言うばかりで、とにかく何が何でも協
力的な姿勢を示す事は皆無である。
 これは我侭学生と何一つ異なるところは無い。
 そして、よく政治家の不祥事を目の敵のように叩くが、あれは、
「正義に反した事をしてけしからん」ではなく、
「おまえ達だけいい思いをしてズルいぞ。悔しい」だ。
 つまり、同等の権利とチャンスがあれば皆同じ事をするのだ。
 大げさに騒げば騒ぐほどそういった心のやましい一面を露呈して
いるという事がなぜ分からないかな。

 だから、なんだ。
「庶民のことなど考えないで」
 などと、さも正しいことだと言わんばかりに発表する。が、
 遊びたいだけ遊んで好き勝手気ままに暮らしてきた者が、
 遊びにも行けず好きなこともせず何もかも押し殺し我慢して暮ら
してきた者のことを考えた事が1度たりともあると言うのか。
 きっと考えた事は無いだろうな。だから分からないんだろうな。

 こんな簡単な事が、

 税制の弱い者苛めも予算の無駄使いも様々な横領なども、ぜ〜んぶ、
 身勝手な庶民どもを懲らしめる為にわざとしてるんだよ〜ん。



(147)2001.4.6

$ タバコのポイ捨て $

 酒もタバコもやらなければどうということはないのだが、
 1度知ってしまうとやめられなくなるんだな。
 ところで、

「タバコのポイ捨てはやめましょう」

 というセリフがあるが、これは実のところ、
 タバコを吸わない人と、タバコを吸う人の中でマナーの良い部類
の人、の耳にしか届いていない。
 実際、道端などにタバコを捨てるような者はこんなフレーズを聞
いたぐらいでポイ捨てをやめることはまずない。
 誰が言ったか知らないが「バカにバカと言っても仕方がない」と
は名言だ。
 という訳で。当事者に問い掛けても無駄無駄無駄だということで
こういう法律が出来た。

「タバコのポイ捨てをしている者を見つけた場合、現行犯死刑を執
 行する権限を与える」

 間もなく、
 この法律のおかげでタバコのポイ捨てをする人間は撲滅された。
 しかし、喫煙者の数を大幅に上回る数の人口が減り、今も急激に
減少しつつある。
 1度知ってしまうとやめられなくなるんだな。



(148)2001.4.7

$ みんなの敵 $

 愛だ愛だ愛だ。豊かな感情は人間だけのものだ。
 清く正しく美しく。などと他の動物は考えない。

 しかし、その人間といえば、何の罪も無い動物や植物や虫からウィ
ルスに至るまで、ありとあらゆる生命を苦しめている。
何も良いことはしない。
 欲と栄養過多で膨れ上がったその醜い肢体は今も自然を蝕もうと
計画を練っている。
 モンスターだ。
 人間こそが恐ろしく忌まわしいモンスターだ。
 くそう、
 適わぬまでもせめて一矢報いてやる。
 あ、

 パシッ

「あ〜ん、もう、また蚊に刺されちゃった〜。」



(149)2001.4.8

$ クリエイター $

 ここはとある神殿。
 ある気難しい芸術家が生徒たちの前で創作活動について講釈をし
ていた。

「クリエイターにおいて、
 無冠の帝王などと言えば聞こえは良いが、その称号は結局のとこ
ろ結果を残せなかった者の強がりにすぎない。
 またその反対に、
 経歴や肩書きや苦労話でしかものを言えない者もまあ多いこと。
 クリエイターなら創作物でものを言えというのだ。
 誉められたいだけならお母さんにでも見て貰え。
 が、それらはまあいい。
 だがこれだけはおまえたちにもくれぐれも言っておく。
 駄作をこの世に出すな。失敗作は自分の部屋に置いておくものだ。
 恥をさらして同情されようものならそれはクリエイターとして失
格だ。いいな。分かったな。
 もし既に世に出してしまったものがあるなら今日中に回収するよ
うに。」

 翌日、人類の10分の9がこの世から消えた。



(150)2001.4.9

$ 犬の糞 $

 犬に罪はないんだよ。犬にはね。
 ただ犬を飼ってる人間にどうしようもないクソバカが多数存在する。

 その顕著な1例が犬の糞だ。

 だいたいは人通りや民家の少ない道路にさせて知らん顔をして行
くのだが、普通の道の真中にさせて始末しないやつも決してめずら
しくはない。
 あれはそれだけでもムカつくが、自動車が通ったりしたら悲惨だ。
 タイヤの直径×πの間隔でその道路を糞まみれにしてゆく。
 翌日も同じ散歩コースを通るはずなのに、それでも平気なんだな。
 あいつらは。
 もしかしたら自分は家の中で犬を飼ってたりして、部屋の中にも
糞が落ちているくらいだからなんとも思わないという事なのだろう
か。まったく迷惑な話だ。これで子供の情操教育の為だからとか何
とか言ってやがったら即絞め殺してやる。

 ガシャーンッ!!!

「うわわ、な、なんだ」

 部屋の窓を叩き割って進入者が。

「いた、おまえかっ!おまえだな!!即絞め殺してやる!!!」

「誰だ、おまえは」

「ええい、やかましい。いつもインターネットの真中に糞みたいな
 ショートショートを撒き散らしやがって。迷惑な話だ。死ね」

 うぐぐぐぐ。




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