(171)2001.7.7 $ 3次元入出力装置 $ 「ついに3次元スキャナーと出力装置が出来た。 材料さえ入れればどんなものでも完全に複製可能だ」 「物凄いことをアッサリ言うな」 「という訳で好きな女の子を10体コピーした」 「何してんだよ」 「10人もいれば1人ぐらいはおいらの方を向いてくれるだろう」 「で、どうなったんだよ」 「失敗に終わった。 同じ人間を10人作っても答えは同じだったということなんだ。 彼女たちはきっと元の恋人のところに行ってしまうのだろうな」 「と言うかそれから先のこと考えてないだろ。そいつらの人生とか」 「いいなぁ、おっぱいが22個か」 「もういい」 (172)2001.7.7 $ 信ずる者達 $ 昔、宗教上の問題から、子供が大怪我をした時に両親が輸血を拒 んだ為に死なせてしまったという事件があった。 その当時世間はおおむね「バカげた話だ。これだから宗教家は」 といった内容の批判を浴びせ掛けた。それもどうかと思うのだが。 それよりも遥か昔、信ずる者は救われる。と1人の男が言った。 今。 身体上の不良部分を直す為に遺伝子治療で全身のDNAを組み替 える。 怪我などで欠損した部分や消耗部分は培養して埋める。 身体的機能を向上させるためにナノ、バイオテクを駆使して身体 のいたるところを強化。 外面的な整形は言うまでも無い。 環境破壊が進んだ為に人類は上記の処置を受けなければ生きてゆ けない時代になった。 その副産物として事実上不老不死を手に入れた。 しかしながら、敬虔な信者達はこの事を「神への冒涜だ」と言って 上記の処置を一切受けなかった。 こうして信ずる者達は総て死滅した。 (173)2001.7.9 $ バカ発見器 $ バカ発見器が発明された。 これは嘘発見器と同じ要領で、声から相手の本性を識別するもの である。 私はこれを電話機に取り付けて相手がバカだった場合は自動的に 通話が切れるように設定した。 これでバカとはおさらばだ。 それから数日間、まったく電話での会話が出来なくなった。 今まで付き合っていた奴らは皆バカだったという事だ。 インテリぶってたあいつも、他人をバカにしていたあいつも、評 論家ぶってたあいつも、自慢話ばかりしていたあいつも、学歴や教 育を語っていたあいつも、善人面していたあいつも、、、、 ふふ、 機械のセンサーはごまかせなかったというわけだ。 どれ、たまにはこちらから電話をかけてやろう。 プルルルル、プルルルル、ガチャ、「はい」 「あ〜、もしもし、俺」プチ、ツー、ツー、ツー、 向こうの受話器は自動的に通話を切った。 (174)2001.7.28 $ 元気発信 $ 特殊な電磁波によって元気になるらしい。 最近のテレビジョンプログラムは皆大なり小なり身体に影響を与 える波を発している。 もちろん害になるようなものは厳重にガードされており、また、 体ではなく精神に直接影響を与える種類の波も禁止されてれている。 この様にサブリミナルよりも強力で、しかも直接物理的に働きか けるテレビの仕組みが発明されてまだ数年しか経ってないのだが、 瞬く間に普及し発展した。 その効果は様々で、中には少々の病気ぐらいなら治してしまうも のもあるという。もちろん効果の高いやつほど受信料も高い。 そういった人気番組はいくら受信料が高くとも皆こぞってテレビ にかじりつく。噂では、そのおかげでNHKの受信料請求人が全員 リストラになったらしい。 まさしくテレビ天国だ。テレビを観てるだけで皆元気。 テレビが1番、テレビが全て、テレビ万歳。 テレビテレビテレビィィィイイイイイイイ!! 気が付くと人生の大半をテレビを観て過ごしていた。 せっかくの元気と健康を無駄にしてしまった。 (175)2001.7.29 $ ボケ防止 $ 空を飛ぶ自動車。何でも出来るロボット。 とにかく色んなものが出来て便利になった。 しかし、それに伴い人類はダメになってしまったように思う。 科学が進んだ分、人類は後退したに違いない。 そもそもたるんでいる。 みんな人生について、何事において、問題意識を持って行動しよ うとしていない。 そういう姿勢は早期のボケを招いてしまうのだ。 人生有意義に過ごそうと思ったらもっともっともっと、真剣に考 えて、観て、聴いて、常に責任を持って行動をしないといけない。 ボケ老人になって早死にするのが嫌なら、さあ、大きく声を出して! はいっ!はいっ!はいっ!わーっ!わーっ!わーっ! プチッ 脳溢血で死んだ。 (176)2001.7.30 $ 願いというもの $ ロボットは言った。 「たとえ限られた命でも良いから人間になりたいです。神様どうか 私を人間にして下さい」 するとその願いが届いたのか、神様が現れてロボットを人間にし てくれた。そして神様は言った。 「ところで、お前は前世でなんと言っていたか覚えておるか」 「いいえ」 「今度生まれ変わる時には無限の命が欲しいからロボットになりた いと言っておったのじゃ。」 (177)2001.8.2 $ 人型戦闘兵器 $ 違法の部品ばかり集めて作られた米軍の最新鋭戦闘マシン。 通称ガンフェニックス。 この機体はスペシャルA級の極秘軍事任務を遂行するために作ら れた人型戦闘兵器だ。 水陸はもとより空中戦でもその威力を発揮する。 巨大なビームカノンを携えて豪快なジェット噴射を伴い舞い飛ぶ その機影からこのあだ名がついた。 しかし、このマシンを使いこなせる人間は数少なく、普通のパイ ロットでは振り回されてコクピット内で全身打撲の重傷になってし まう。 こいつを使いこなす為には魔神のような反射神経を要するのだ。 それ故にこのマシンのパイロットであるとういうことは最高の憧 れと畏怖の対象であった。 「ちょっと待ってくれよ。ところで、なんでそれは戦闘機でも戦車 でもなく、わざわざ「人型」戦闘兵器なんだ」 「それは技術開発チームの主要メンバーが皆日本人だったからさ」 (178)2001.8.6 $ 仮想世界内での自分の姿 $ 「神様でも悪魔でも良いですから、私を絶世の美女にして下さい」 〃 今のゲームは、 観るもの全てをコンピューター側で作成して出力する方式から、 ある一定のキーとなる信号だけを脳に送って細部は受信者のイメ ージに任せるという方式に変化している。 初期の頃は個人差が激しかったが、研究が進むにつれ、マルチ プレイで多人数が同じフィールドで接触をしてもほとんど感触の 相違が無くなるほどにまでになった。 いや、そもそも現実世界でも他人と自分の見ている世界が同じ とは断定できない。 貴方が思っているリンゴの「赤」と、私の思っている「赤」と は、そもそも「赤」という色が同じに見えているかどうかは証明 のしようが無い、ということだ。 だから脳に直接送られてくるゲーム用に作られたデーターによ って作り上げられる仮想世界の細部が個人差によって多少変化し ていたとしてもプレイする上では全く問題は無い。 〃 「えっ?! ということは、今私が生きているこの世界はゲームの世界だと言 うんですか?」 〃 時々ゲームに没頭しすぎて何もかも忘れてしまう人がいるんだ な。リセット方法は操っている本体を殺して一度ゲームオーバー にして下さい。 〃 「はい、分かりました。ありがとう神様」 グサッ、ドクドクドク、バタリ。 〃 いえ、私は悪魔です。一応言っておきますが今のは全部嘘です。 〃 (179)2001.8.8 $ 宇宙の花火 $ 2人の男女が宇宙ステーションの窓から外を眺めていた。 「あ、あそこの星雲綺麗ね」 「君ほどじゃないよ」 「ま、いやだわ。」 「あの星雲は超新星残骸といって、年老いた星が大爆発をおこして 飛び散って出来た物なんだ。そして長い長い時を経て、あのチリと ガスの分子は再び集まりあって新しい星に生まれ変わるんだ」 「そしたらあの輝きは星の赤ちゃんでもあるのね。あんなに綺麗で ロマンチックだわ」 「ふふふ」 「うふふふ」 その星雲の基となった恒星の大爆発によって、その惑星と衛星及 び周辺の星々に住んでいた天文学的な数に上る生命が一瞬にして奪 われて阿鼻叫喚の地獄絵図と化し、ロマンチックどころの騒ぎでは なかったということをこの2人は知らない。 (180)2001.8.22 $ 超ホレ薬 $ 発明の歴史において決定的に質が変化した時期があった。 前期は自然の摂理に沿ったものを利用した「応用」で、 後期は自然の摂理そのものを変えてしまう「創造」である。 例えば時間の流れを変えてしまうタイムマシンなどは結果的に後 者の登場を待つこととなった。 「ホレ薬も前期の発明のものと後期の発明のものがあるが、おいら の場合は後期版のじゃないとダメだな」 「自分で言うなよ、悲しいな」 「大自然の物理法則を超科学力で曲げてまでええええ〜」 「というか他に使い道ないんか。その科学力」 「何を言う。アニメキャラで実存のハーレムを作るにはこれくらい の科学力がいるのだ。」 「……」 |
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