(181)2001.11.4

$ 職務質問 $

「おい君待ちたまえ。」
 男が警官に呼び止められた。職務質問だ。
 男には急ぎの用事があった。
 母親が危篤でどうしても死に目に会いに行かねばいけないので勘
弁してくれと懇願した。
 しかしそんなことで不信な人物を見逃していては仕事にならない。
 警官はその申し出を跳ね除けて彼の時間を奪った。
 結局その男が母親のもとに駆けつけた時には時既に遅く、哀れな
老婆は最後まで我が子の名を呼び続けたまま思いを遂げられず息を
引き取ってしまっていた。

「おい君待ちたまえ」
 男が警官に呼び止められた。職務質問だ。
 男には急ぎの用事があった。
 これから大事な契約先のところに行く途中で絶対に遅刻できない
から勘弁してくれと懇願した。
 しかしそんなことで不信な人物を見逃していては仕事にならない。
 警官はその申し出を跳ね除けて彼の時間を奪った。
 結局その男は遅刻が原因で大事な契約先を失ってしまい会社に多
大な損失を与えたことからクビになってしまい職を失ったことから
家庭は崩壊しズルズルと莫大な借金を抱えることになりいよいよど
うしようも無くなってしまい一家全員無理心中を図ったが自分だけ
生き残ってしまい最終的には精神に異常をきたしてたまたま止めて
あったトラックを運転して繁華街を爆走しおびただしい数の人間を
轢き殺した後ガソリンスタンドに突っ込んでしまった。積荷はプロ
パンガスだった。

「おい君待ちたまえ」
 男が警官に呼び止められた。職務質問だ。
 男には急ぎの用事があった。
 一刻も早く悪の組織を叩き潰さなければならず、もしタイムリミッ
トを過ぎてしまうと世界は破滅してしまうから勘弁してくれと懇願
した。
 しかしそんなことで不信な人物を見逃していては仕事にならない。
 警官はその申し出を跳ね除けて彼の時間を奪った。



(182)2001.11.5

$ 無責任な下請け会社 $

「じゃあここんところの確認だけお願いします」

 これが下請けのシステムエンジニアの手である。
 私は某システム開発の社員なのだが、しばしば派遣や外注に仕事
を依頼する。
 しかし、彼らはこちらが注文した通りのプログラムの開発をする
にはするのだが、必ず最終チェックだけはしないのだ。
 一応見てください的な何気ない軽い雰囲気で上記のようなセリフ
を言うのだがこれが鍵で、もし万が一システムの不備で業務に支障
が出たとしても、
「最後に確認をしたのはあなた方だから私は一切責任を取りません、
関知しませんよ」と言うわけだ。
 どのみち彼らにとって、業務上どうなったかということは結局他
人事なので仕事内容も態度も全く誠意的ではない。
 故に、まず間違いなく重大なバグが必ずどこかに含まれているこ
とは約束されている。
 私は受け取った資料を元にそれを見つけ出さなければならないの
だがハッキリ言ってこの労力が馬鹿にならない。
 なんでこんな無責任な仕事が許されてるんだまったく。給料はあ
いつらの方が上だというのに。おまけに仕事時間もきっちり定時で
帰りやがるしなあ。
 あ〜だんだん腹が立ってきた。やめたやめた。
 もう何があっても知るもんか。こんな会社辞めてやる。

「やっと辞めてくれましたねえ」
「最近はリストラするのも世間体がありますからな」

 実は劣悪なシステムの下請けを装ったリストラ請負会社の作戦だっ
たということを、男は知る由も無かった。



(183)2001.11.9

$ 不動産建設 $

 予算が決まった。建物の設計図が決まった。では予定通り工事を
始めましょうか。
 ではこの業界はやってゆけない。
 普通に仕事をしても大した設けにはならないのだ。
 彼らの本当の仕事はここからで、例えば柱を1本減らす。すると
柱1本分の材料費が減る。しかし無論その事は客には言わず予定通
りの費用を請求する。こうして柱1本分の材料費は丸々設けになる。
 という感じで、いちいち列挙するわけにはいかないが、こういう
手順で彼らはお金を稼いでいる。
 だからこの業界はセンミツマンミツと言って、千に三つ、万に三
つしか本当のことを言わないというのが通例である。
 ちなみに、うちは知り合いの業者に紹介してもらったから大丈夫。
などというのは良いカモの代表例であるので気をつけたほうが良い。
全員共謀者なのだ。
 まあしかし、そんなこんなでも一応家は建つ。欠陥が見つかるの
は10年以上経ってからだ。いわゆる後の祭というやつだがな。
 そんな時は騙された者が勉強不足で悪いってことで我慢して泣き
寝入りするしかない。諦めるがいい。

「で、そろそろ10年目なんですけど。雨漏りはするし、表の壁も
中から腐ってきているし、もう大変なんですよ。きっと見えないと
ころであちこちヒビが入っているんでしょうねえ。
 頼んだ建設業者が悪かったのですかね。
 まあこれも自分が勉強不足で悪かったと思って我慢しますよ。
 でも幸い白蟻の心配だけは無いみたいです。今まで1匹も見たこ
とありませんから。」

 某原子力発電所にて。



(184)2001.11.10

$ 部下の悲鳴 $

 管理職とは管理をするのが仕事のはずなのだが、うちのヘッドは
まったく管理能力がなく、いったい今誰がどの仕事を抱えていて、
何が進行中でどの優先順位が高いのかということをほとんど理解し
ていない。ついでに仕事にかかる労力の感覚も麻痺しているようで、
どんなに部下が頑張って仕事をこなしていても「出来て当たり前」
とか「片手間で出来るだろう」的な発想が目立つ。故に仕事量もス
ケジュールも無茶苦茶の状態が続いており、改善の兆しは無い。
「もう切れた。こんなところ出てってやる」
 あきれ果てた社員は一斉に職場放棄してしまった。

 翌日、とある1室で内臓がごっそり無くなった死体が発見された。
 その男は暴飲暴食を繰り返していた様ではあったのだが、、、、



(185)2001.11.14

$ 社長のバカ息子 $

 恵まれているからバカになるのか、バカは生まれつき恵まれる素
質があるのか。
 今日も部長が社員ともめごとを起こしている。
 ここはとある印刷会社で広告や紙面などの編集デザインもしてい
るところなのだが、この業界はとにかく仕事の時間が半端じゃなく、
残業代も大してつかない。
 そしてありがちな話だが、この会社は人手が足りないというのに
全く新しい人を雇う気配は無く、人を人とも思わないようなこき使
い方をしてその場その場をしのいでいる。
 労働基準法に反しているのは言うまでも無い。
 またこの部長が社長のバカ息子だから始末が悪い。
 しょっちゅう社員ともめているが九分九厘は部長のマヌケ的行動
が原因である。
 しかし、こんなバカでも綺麗な奥さんがいて、おまけにいっちょ
まえに不倫までしている。
 別にいなくても会社の運営に支障のないのだが社長のバカ息子な
のだから仕方が無い。地位に知恵は要らないのだ。

「まったくなんで世の中こんなに不公平なんだ」
「そんなことは無いぞよ」
「……あんた誰」
「わしは経済の神様じゃ」
「んなもんいるか。あんた頭おかしいんじゃないの」
「いや、神様はいるぞよ」
「じゃあ、俺たちの労働条件を良くしてくれよ」
「できません」
「なんなんだよそりゃあ」
「それはそれとして、経済の神様はいるぞよ」
「ったく、バカバカしい」

 社長の引退後、そのバカ息子が社長になった。
 そしてそのバカ息子の息子が部長に就いた。
 しかし、そのバカ息子の息子もバカ息子だった。
 バカ2代のお陰で瞬く間に会社はつぶれた。
 バカは路頭に迷う事になった。

 ついでに社員とその家族一同も路頭に迷うこととなった。



(186)2001.12.12

$ 容疑否認 $

〃容疑者は犯行を否定している模様です。〃

「〃俺は知らなかったんだ。俺が悪いんじゃないんだ。〃と供述し
ているとのこと、か。大体犯人って奴はこんなこと言うんだよな」

「すみませーん。お荷物届いています」

「はい、はいはい。はい。受領印ね」

「どうもありがとうございましたー」

「ん、あれ、これは、隣の会社宛てじゃないか。仕方ないな、届け
といてやるか。でも、もう遅いからな。誰か残ってるといいんだけ
ど……
 あ、ガードマンが残ってる。
 すみません。これお宅の会社に届いてた荷物なんですが、運送屋
が間違ってうちに届けちゃったんです」

「は、これはどうもご丁寧に有難うございます」

 その晩、その小包が爆発して大火災が起きた。

「手がかりはないのか」
「爆発物の破片から指紋がとれました」
「夜中に不信人物が建物に入るのを見たとの通報がありました」

「おまえが犯人だな。昨日の夜隣の会社に何をしに入ったんだ。」

「え、荷物を届けただけですよ。え、嘘じゃないですよ。なんです
って、そんな時間に配達した記録は無いですって、ちょっと待って
くださいよ。ガードマンに聞いてくださいよ。ええっ、そんなの雇
ってないですって。そんな馬鹿な。嘘だ。信じてくださいよ。僕は
知らなかったんだ。僕が悪いんじゃないんだ」

「話は署で聴こうか。大体犯人って奴はそんなことを言うんだよ」



(187)2001.12.16

$ 仕事が忙しくて $

「ネットで掲示板を見ているとどいつもこいつも、仕事が忙しくて
更新できませんとか、会社を辞めたいですとかほざきやがって。世
の中には働きたくても働けない人が大勢大勢いるってことが分かっ
てないのか。
 ちくしょう。どうして俺がリストラなんかされなきゃいけないん
だ。くそー。これから生活どうしたらいいんだ。
 まったく、仕事が忙しい忙しいと言って愚痴をたれている奴の事
が憎たらしいったらありゃしない。
 あ、そういえば俺の同期の奴も、趣味も仕事も忙しくて大変です
とかぬかしてやがったな。
 ほんとに、あいつが代わりに辞めりゃよかったんだよ。まったく。
 いったい今ごろどうしてるんだろううな。
 なんで俺だけこんな不幸な目に会わなきゃならないんだ。」

 しかし、経費節減で人員削減の為に、残った人間は今までの数倍
にのぼる仕事の負荷がかかる結果となり、例のこの男の同期に限っ
て言えば、さんざんこき使われた挙句過労死してしまった。
 無論、退職金を受け取ることもなく、仕事とは別の志も半ばにし
て無念の死を遂げたと言える。
 一方リストラされた方の男は何の目的も無いままに何だかんだ言
いながら長生きしたという。



(188)2001.12.16

$ 会社の構成とは2割の人間が残り8割 を
 を食わせる様な仕組みになっている $


 上司 「給料分働けよ」

 部下 「給料分しか働かねーぞ」



(189)2002.1.30

$ 自殺未遂 $

「あの車ならあまり痛くなさそうだ」

 男は左から走ってくる軽自動車に向かって駆け出した。

 毎日夜遅くまで働かされていた。勿論サービス残業だ。それでも
成績が上がらないぞと罵られていた。
 不相応な労働を押し付けられ、出来てあたりまえ、失敗したら無
能扱いという境遇に疲れ果てていた。
 そこで男は自殺未遂を謀ったのだった。
 これで会社その他にあてつけがましい報復ができる。
 その為に、あまりスピードの出ていない軽自動車を選んだのだっ
た。会社の横暴を暴露した遺書も用意してある。

「なるべく軽症で済むように……」

 ドカンガシャン バキベキバキ

 男の意とは裏腹に必殺の打撃音が鳴り響いた。
 左から走ってくるお目当ての軽自動車に気を取られていた為に、
右方向の遥か彼方から猛スピード疾走してくるスポーツカーに気付
かなかったのだ。
 男は跳ね上げられ頭からフロントガラスをぶち割って身体半ばま
で助手席の方へ突っ込んだ。
 一瞬視界が真っ暗になったがあまりの激痛の為すぐに意識を取り
戻した。

 と、とめてくれ、

 そう言ったつもりだったが声にはならなかった。妙な角度で見え
る自分の腹からは腸らしきものがはみ出ていた。男はもうダメだと
思ったが手当てが早ければまだ助かるかもしれないという希望を持っ
て運転手の方を見た。

「また人をはねちまったー。これで5人目だー。ギャハハハハ」

 その数秒後2人を乗せたスポーツカーはカーブを曲がり切れずに
ブロック塀に激突しクシャクシャになりながらその塀を突き破って
民家に突入後爆発炎上。
 男は炭と化し、その死体は身元識別不能となった。

 数日後、会社では男の死を知る者は無く、ただ長い間無断欠勤し
たのちに失踪した迷惑な男として一方的に懲戒免職となった。



(190)2002.4.14

$ 校則 $

 だいたい高校ではバイクに乗るのは禁止されていると思うが、そ
れはバイクという乗り物が危険だからとか、今は勉学に励むべきだ
からとかいう理由である。

 しかし、本当に生徒のことを思うなら、一方的に禁止という手段
で通すよりも、むしろ、正しい交通規則やモラル、上手に運転する
方法を教えるべきではないだろうか。
 などというのは高校生までの正回答。

 先生と言えども公務員、国が雇い主のサラリーマンである。そし
て、公務員というのはサラリーマンの中でも最も平凡安定無難な生
活を望む人たちである。
 だから「バイク禁止」というのを正確に翻訳するとこうだ。
「おまえ達がこの学校の生徒で俺たちが関わっている間だけは頼む
 から問題ごとを起こさないでくれ。しんどい、疲れる。余計な仕
 事を増やすな。残業代も出ないのに。」
 というわけで、
1.生徒に対して人としてのお手本となるように見える先生方も、
 結局は汚いことを考える同じ人間である。このことから、この世
 の中において、立場や役割や権威に惑わされて簡単に人を信用し
 てはいけないと言える。
2.真実が分かったところで集団の中で権威を持っている勢力の決
 め事にとりあえずは従うしかない。決め事とは例えばこの場合で
 あれば校則であるし、世間に出ればその会社の就業規定とか社風
 という漠然としたものまで、またこれから先或いは今現在たびた
 び直面する様々な法律等。
3.人間とは自分の都合の良いように嫌がる他人にスジの通らない
 ような事を強要するくせに、上記のような立場などによる錯覚や
 弱いものいじめをするような権力など、ありとあらゆるものを利
 用して「自分は善人、他人は悪者」というシチュエーションを築
 こうと常に画策し実行するものであるので注意すべき。
「一方的にバイク禁止」という校則からは少なくともこの3点を事
 を学びたまえ。
 というのが社会人としての正回答である。

 そして、この程度の真実などまだまだ可愛い可愛い可愛いもので、
もしこんなことでほんの少しでもショックを受けているようでは社
会に出てもろくな大人になれません。
 この回答から得られる本当の真実とは、この薄汚れた社会の現状
を嘆くことではなく、逆に利用しておいしい汁をすするべきなのです。
 というのが出世して成功した人々及び犯罪者たちの正回答である。




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