死んだら何も無くなると思うじゃん



「お前等の代わりはなんぼでも作れる」
 北斗の拳という漫画の悪役が、自分が逃げる時間稼ぎのために、
自分の息子たちに言い放ったセリフ。
 読んだ当時は、まあそうだよな、と少しだけ納得していた。

 悪役以外は自分の子供のために自分が死んだりする。
 鈴虫やカマキリも自分の子供のために雌に食われる。

 しかし、死んでしまったらそれで終わりじゃない。何も分からな
くなるじゃない。と考えていたのだ。

 その後、自分の子供が生まれたときでも、責任持って面倒をみね
ば、身を粉にして働かなければ、守らねば、とは当たり前に思った
ものの、死なない程度に、という無意識な感覚は変わってはいなか
った。

 また少し経って、子供がやっと言葉を発するようになって、小さ
い手でギュッと私の指を握り、
「ぱぱ」
 と言われた時、
 死んだと思った。
 わが命に代えても、とこの時初めて思った。
 ああ、死んでも良いと思うようになるんだな、と思った。

 そんな我が子も結婚して家を出て行った。とか、
 事故でどうにかなった。とか、
 何があったというわけでもなく、
 今日も普通に大学に通っている。

 なんか、牙大王の記事をたまたま見て、ふと思い出したから書き
留めただけ。



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